【本感想】かわいい☆キリスト教のほん

 スク水ヤハウェに釣られて購入した"かわいい☆キリスト教のほん"を読み終わったので、感想と紹介を書きます。

 


かわいい☆キリスト教のほん

(左:ヤハウェ 右:イエス)

 

概要

 ユダヤ教を母体としたキリスト教の成り立ち~近代におけるまでの改革についてや、日本人にはあまり馴染みのない教義などが嚙み砕いて解説されています。表紙のような女体化イラストは登場人物/神紹介と、挿絵で登場します。ページ数に対しての数はそれほど多くないので、本当にそれだけを目当てに買うと少しがっかりするかも。

 本書の特徴として現代的な喩えを用いているのでイメージを湧かせやすいという点があります。

 

マタイさんやルカさんは、「まーた、マルコのやろー、農業の話とか書きやがって~」と思い、サクっと削除したのかもしれません。(P20.第一章 イエスの時代)

 こんな感じの台詞調の表現とかよく出てきます。

 

後世の人たちは「パウロさんはイカレポンチだったけど、まあ一部、いいところもあったね」という評価をすれば良かったんですけれど、不幸にも「聖パウロさま」なんて祭り上げちゃったものだから、パウロさんのロクでもないところまでもがアレもコレも肯定されることになるわけです。(P58.第二章 初期キリスト教新約聖書)

  イカレポンチめ!

 

 全体として、歴史としてキリスト教を解説していく内容となっているので神について真面目に考えていたりとか、天使とか悪魔がどうとかそういう話ではありません。ただ、例えば三位一体とかよくわからんけど大体こんな感じって考えられているんじゃないのといった解説は付いているので、そういうものについて知識として知りたい人への入門書としては良いものだと思います。

 また、愛に満ちあふれた女子マネージャー(唯一神)と弱小高校野球のオリジナル短編が収録されています。(詳しくは後述)

 

キリスト教の起こり

 僕が常日ごろ気になっていたこととしてキリスト、というかイエスって何なの? ということなんですよね。ざっくり、ヤハウェ=神、イエス=メシア、みたいなイメージだったんですけど、じゃあなんでイエスを讃えるようになったのかって。

 

神の子羊

 この本を読んで得たイメージをざっくり纏めると。エスヤハウェに対する特大の供物になってくれて、そのおかげでその他大勢の信者たちはヤハウェへの供物をお供えする必要がなくなったり、教義的なルールが少し緩和された。ありがとうイエス様! みたいな感じ。

 ですが、そもそもこういうのってイエスの死後に周りの人たちがどんどん盛っていった話みたいですからね、なかなかに勝手というかなんというか。本書ではキリスト教の原点となったこういう考え方が受け入れらていった理由として"安かったからじゃないか"と述べていたのですが、それはそうだろうなと。そりゃ供物もただじゃないし。

 ちなみに、このあたりの話で出てくる神の子羊(生贄)としてヤハウェに供されるイエスのイラストが本書の挿絵で一番好きです。

 

三位一体

 もう一つの知りたかったのはこれです。僕みたいに宗教にあまり関心のない人間からすると、ヤハウェが絶対的トップでイエスは神と人間の間の中間管理職的な存在でいいじゃんって思うんですが、どうもそういうもんでもないらしく……。

 

三位一体で揉める

 三位一体というのは、父:ヤハウェ 子:イエス 聖霊:神パワー、という感じのニュアンスらしいのですが、三位一体の議論というのは"父が子を造っただと被造物のイエス・キリストを拝むことになるヤダヤダ"とか、かといって"子が被造物でないとすると父と子両方神で多神教っぽくなるヤダヤダ"みたいな感じで揉めてたらしくてすごい不毛だなって。というか人はヤハウェの被造物ってスタンスなんじゃないのかよ!

 別に、一見不毛だけど本人たちがこだわりを持つことについて真剣に議論するというのはむしろ素晴らしいことだとは思いますが、この手の話に関しては熱入りすぎて人死んだりしてますからね…。

 

政治的な話が絡むと面白くなくなるやつ

 キリスト教が大きくなって国教化とかされていくと、権力問題とか戦争とかが絡み始めてどんどんろくでもない話が増えたなあと、そんな印象を受けました。「俺の主張が正しい! 俺以外は糞!」みたいなのは結構なんですけど、政治問題の道具としてやり始めるともう何がなにやらって感じです。

 本書のあとがきでも触れられていたんですが、キリスト教の歴史って凄い人間臭いんですよね。宗教っていうと頭逝っちゃってて思考が人間離れしてるみたいなイメージがあるかもしれないですが、中世以降には権力やお金絡みの駄目なエピソードが一杯あって良いのやら悪いのやらと思いました。

 

うちの女子マネージャーが唯一神で困っています

 本書、冒頭と最後に収録されているラノベ感のあるタイトルの短編小説。ある意味本編。瀬霧(せむ)高校野球部と女子マネージャー八葉重(やはえ)ちゃんの話を一年生の丸子(まるこ)君の視点から描いている。

 

「ダメだよ。殺そ。石打ちにしよ」

 そんな無体な、と僕たちは心の中で思ったけれども、もちろん顔には出さない。そんな気持ちを八葉重ちゃんに気取られたら僕たちも殺される。(P218.うちの女子マネージャーが唯一神で困っています)

 

「分かれば、よろしい!」と、八葉重ちゃんは寛容に言った。そして、ご褒美(?)として、世武先輩に新しい家族を与えたのだ。(P220.うちの女子マネージャーが唯一神で困っています)

  

 内容としては、ユダヤ教時代から、異教徒を殺したり、キリスト教ができたり、その後のごたごた、内輪揉め等々を高校野球部~高校そのものになぞらえた話になっており、ここまで本書を読んできた際のおさらいに最適。

 また、主人公の丸子君は八葉重ちゃんや家杉(いえすぎ)さんが実際に野球部にいた時から、その後のごたごたまでを通して体験しており、もしも歴史を実体験したものがいたらこういう風に見えているのかもしれないという物語でもあるのかもしれない。

 

まとめ

 一神教って「俺たちのところ以外の神は糞!」みたいなイメージが強くて、もちろんそういうのもあるんだろうけど、内輪揉めもかなり激しかったんだなって。近代では他の宗教なども寛容していく姿勢が会議で決定されたりしたらしく喜ばしいことだと思います。

 ただ、本書でもてんどんネタのように繰り返されていますが、公的な会議で決まっても全ての信徒がちゃんとそれに倣うかというとそれはまた別問題という。

 

 

 

 

おわり